自然は脈動する-ヴィクトル・シャウベルガーの驚くべき洞察-

本の紹介

自然のエネルギーと生命の不思議について、他のどんなエコロジー関連書でも読めない発見と驚きに満ちた本です。

本書は、オーストリアの伝説的な科学者ヴィクトル・シャウベルガー(1995〜1958)が解き明かした、自然界における生命とエネルギー創造の秘密を紹介した初めての本です。
[日本図書館協会選定図書]

 若き日をオーストリアの森の中で森林監視員として過ごしたヴィクトルは、ある月明かりの夜、滝をさかのぼるマスの姿に引きつけられました。

「マスはなぜ、重力に逆らって滝を昇れるのか?」

 そして彼は、自然界の水は4℃の温度(特異点)を中心にらせん状の渦を巻き、脈動していること、水は「生きて」おり、川―土壌―樹木に生命エネルギー(東洋思想の「気」やプラーナ、また現代で言う「生命波動」「サトルエネルギー」と同様の力)を運ぶ、「大地の血液」であることを発見します。

 この、水の生命エネルギーは「浮揚力」(反重力)をもっており、マスに滝を昇らせ、樹木の樹液を、科学的法則を超えて100メートル以上も引き上げます。

 そしてまた、ルルドなど自然の湧き水がもつ不思議な「癒しの力」の源となっているのです。

 ヴィクトルは、自然は水の脈動と渦巻きの力によって、たとえばサイクロンや台風のような、中心に行くほど莫大なエネルギーを発生し、しかし余分な熱も廃棄物もいっさい出さない、すばらしいクリーンエネルギー(内破エネルギー)を生み出していることを知ります。

 一方、現在人間が使っているエネルギー生産の技術はと言えば、熱や廃棄物や、放射能さえもまき散らす、遠心的で、熱く、破壊的なものだとヴィクトルは批判します。

 自然がみずから機能しているやり方に逆らわないこと、自然の働きに協力すること。それが、ヴィクトルの考えたエコテクノロジーでした。

 彼は、生命エネルギーの活性化による水の浄化、水の生命力を損なわないダムや水路の建設、土壌の肥沃化と有機農法、また半永久的なエネルギー生産法(いわゆるフリーエネルギー技術の先駆け)など、まるでレオナルド・ダ・ヴィンチのように多方面での業績を残しました。

 しかし、1930年代に「自然の破壊は人間の精神と文明を破壊する」と主張したことで著書がナチスによって廃棄され、また戦時中は内破エネルギーを用いたいわゆる「ナチスの空飛ぶ円盤」の製造を強いられ、戦後は多くの研究資料がアメリカやソ連に渡ってしまうなど、晩年は不遇であり、また彼の思想が当時の科学の枠におさまらないものであったため、だんだんとその存在は忘れ去られて行きました。

 しかし1990年代に彼の論文などがまとまって英訳されたことで、環境問題やエネルギー問題での新しい発想を求める人たちによって、彼の思想の再評価が始まっています。

 遺伝子組み換え作物への反対論者として知られる英国の生物学者メイワン・ホー博士(『遺伝子を操作する――ばら色の約束が悪夢に変わるとき』〔邦訳、三交社〕)は、本書へのこんな推薦文を書いています。

 シャウベルガーは正規の教育を受けなかったが、時代に先んじた天才だった。水や生きたエネルギーについての彼の注目すべき洞察と研究は、当時も今も、既成の科学のドグマに異議申し立てを行なっている。(……)生体エネルギー、意識、地球科学、流体力学、熱力学、そしてまだ名づけられていない多くの分野についての純粋なインスピレーションと具体的アイデアを得るために、この本を読んでほしい。

 自然のエネルギーと生命の不思議について、他のどんなエコロジー関連書でも読めない発見と驚きに満ちた本です。

目次

序章
浮揚力と無抵抗の動き/屈せざる者/もう一つの世界観/「自然の科学」に向けて

●第1部●もう一つの世界観

第1章・ヴィクトル・シャウベルガーの先見性
水の魔術師/木材運搬用の水路/生命の源としての水/「動き」がもっとも重要/「温度」が支配する/進化/バランス/内破(爆縮)/先見性の人

第2章・さまざまな種類のエネルギー
自然の微細なエネルギー/ヴィクトルの世界観/なぜヴィクトルの思想はミステリーなのか?/エネルギーの諸段階/創造的進化の鍵となる渦巻き/創造的プロセスとしてのエネルギー/霊的な科学/異なる次元/「オクターブ」を変える

第3章・対極物の吸引力と反発力
肥沃化をもたらす存在としての太陽/自然の原動力としての極性/対極物が作用し合ってバランスをもたらす/重力と浮揚力

第4章・自然界のパターンと形状
共鳴としての音/共鳴は質に関わる/植物には知覚と記憶がある/振動と物理的形態/パターンと形状/動きに見られるパターン/太陽系に見られるリズム/二つの幾何学系の対決/神聖幾何学/黄金分割/卵形の魔法

●第2部●この世界はいかにして機能しているのか

第5章・自然なエネルギーの生産
現代の技術の非効率性/エントロピーとエクトロピー/科学的「法則」/エネルギーの汚染/目の前にある選択肢/エネルギーが質を決める/創造的なエネルギーの渦

第6章・動きバランスのための鍵
人類の使う間違った種類の動き/「原初」の動き/動きの種類

第7章・大気と電気とのエネルギー的関係 地球の大気/電気/地球のバイオコンデンサー/エネルギーの蓄積装置としての地球/「エレクトリシズム」と磁気/嵐、水蒸気、気候

●第3部●水:生命の源

第8章・水の性質
水の記憶/水の創造/水の特異点/さまざまな水の性質/川はいかにして自分を守っているのか/温度勾配

第9章・水循環
完全な水循環/半水循環/温度勾配と栄養供給

第10章・泉の形成
泉の崇拝/湧出泉/真の泉/湧き水はどのようにして上昇するのか/海からエネルギーを生産する

第11章・川の生命性
川のさまざまな段階/水の温度と動き/正の温度勾配を作り出す/川で生じる渦巻きの種類/創造的エネルギーの源としての渦巻き/川の湾曲部の形成/従来の河川工学/水力発電

第12章・生きた水の供給
減少し続ける水の供給量/利益のからむ水/現代の水の処理法/水の記憶を変容させる/管状の水の動き/水道管の材料/シュツットガルトでの実験/血液の循環/水の保存法

●第4部●樹木という生物

第13章・森林の役割
森林の進化/森林の破壊/ある教訓的物語/熱帯雨林/林業/単一栽培の不毛性/生物多様性/森林のエネルギー

第14章・樹木という生物とその性質
生物圏の中の樹木/樹木の形態/樹木と人間その共生関係/樹木と色彩/樹木の物理的性質/樹木の分類/光を求める木、蔭を求める木/光が促す生長/人間による破壊/光合成の重要性/未成熟な水/水の成熟

第15章・樹木の代謝
樹液の動き/樹木の中の温度勾配/「バイオコンデンサー」としての樹木/根系/土壌と栄養

●第5部●自然との共働

第16章・土壌の肥沃化と新しい耕作方法
集約農業の危機/新しい耕作方法/二種類の電磁気/金の鋤/生体鋤/畝間の並べ方/放牧と草刈り/化学肥料という毒

第17章・ヴィクトルの有機農法
生物学的農業/土壌の無機成分の補充/有機農法/バイオダイナミック(生命力学)農法/自然界における微細エネルギーの役割/冷たい炎/肥沃化させるエネルギー

●第6部●エネルギーの革新

第18章・内破パワーを利用する
「内破(爆縮)」研究の始まり/アメリカのコンソーシアム/新種の航空機?/ヴィクトルの新エネルギー研究/生物学的真空/冷たい核融合/湧き水をエネルギー的に生成する/内破エンジン/リパルシン(脈動式機関)と「空飛ぶ円盤」

第19章・ヴィクトル・シャウベルガーと社会
ヴィクトルが人類に遺したもの/未来はどうなるのか?

補遺
ヴィクトルの未来図を具体化する/スウェーデン/オーストリア/ドイツ/イギリス/デンマーク/アメリカ/オーストラリア

訳者あとがき
原註

著者プロフィール

バーソロミュー,A.(アリック)
ケンブリッジ大学で地質学と地理学を専攻した後、シカゴ大学の大学院課程を履修。アメリカで編集者として、レイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』の刊行に携わる。20年以上にわたりヴィクトル・シャウベルガーの業績の研究を続け、その成果を本書にまとめる。
野口正雄
1968年京都市生まれ、同志社大学法学部卒。医学関係をはじめ自然科学系の文献の翻訳に従事している。京都市在住。
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